「実践性」から見た高専教育─キャリアとの関連に着目して

要約

濱中 義隆(国立教育政策研究所総括研究官)

高等専門学校(高専)は、実験・実習等を重視した教育プログラムを特徴とする実践的な技術者養成を行う機関として高く評価されているとされる。一方で学校類型としては、その量的規模の小ささもあり、制度発足以来50年以上が経過したにもかかわらず、一般社会における認知度は高くない。そもそも高専の機能や社会的評価をアピールするためのエビデンスすらほとんど存在しないのが現状である。本稿では、こうした現状認識の下、1976〜2008年の高専卒業者を対象とする調査を用いて、かれらの進路・キャリア等の分析から高専卒に対する社会的評価の現状を明らかにするとともに、「実践的」と評される高専教育を卒業者自身がどのように認識しているのかを検討した。過去40年余の間、技術者養成の高学歴化は著しく進行したが、高専入学者の学力、卒業時の就職状況にほとんど変化はなく、また就職後のキャリアからも、高専卒は依然として大学工学系卒業者並みの処遇を受けていることが明らかになった(ただし工学分野における大学院修了者の増加により大卒=学士卒の地位低下が生じていることも否めない)。一方、高専在学中の経験で現在、最も役に立っているのは、「専門科目の講義」や「専門の実験・実習」であること、さらにそうした「役立ち度」の規定要因として卒業後の自己学習の状況が重要であることを示した。高専教育の「実践性」を支えているのは、日常の授業科目で得た知識・技術が基盤となり、その後の自己学習を通じて応用力を高める点にあることが示唆された。

2017年10月号(No.687) 特集●大学教育の「実践性」

2017年9月25日 掲載