資料シリーズ No.117
諸外国における在宅形態の就業に関する調査

平成25年6月29日

概要

研究の目的

厚生労働省からの要請調査

研究の方法

文献調査、及び現地調査(アメリカ)

主な事実発見

各国における在宅労働は、伝統的には物の加工に関する請負的な形態(わが国の家内労働)が主流であったが、経済のサービス化やIT機器の普及などの影響により、多様なサービスの提供へと拡大してきた。これに伴い、従来の経済従属性の強い働き方と、より専門性・独立性の高い自営的な働き方の境界や、こうした労働に従事する層の労働法上の位置づけが曖昧化する傾向にあるとみられる。しかし、在宅という働き方に付随する問題として、概してその実態は把握されにくい。

アメリカでは、在宅労働が規制緩和を経て原則自由化されるに至った1980年代を境に、論点が大きく様変わりした。自由化後も続く不法な在宅労働者の増加や、雇用関係の曖昧な在宅労働者の増加を背景に、時間管理の自由度の高さや仕事と家庭の両立といった従来の議論から、社会保障制度の不備や企業側の責任の不明確さ、雇用関係の有無による法律の境界の不透明さなどが論点とされるようになっている。現状では、雇用されているか自営かを問わず経済的実態に即して労災補償と公正労働基準法が適用される一方で、雇用関係を前提とする全国労働関係法、失業保険は適用外とされることが多い。また、企業負担による社会保障システムが一般的であるため、在宅形態の就業を行う労働者の半数を占める自営業者は年金や健康保険も対象外となっている。

イギリスでは、IT機器を用いた在宅労働者は増加しているとみられるが、実態はほとんど明らかになっておらず、保護法制などの議論の中心は未だに伝統的な在宅労働者(家内労働者)にある。在宅労働者は、雇用関係の有無や就業の実態などに即して、労働法上の権利が全く異なる「被用者」「労働者」「自営業者」のいずれかに区分されるが、判断基準が曖昧で、労働者自身も自らの権利について理解しにくい状況にある。しかし、権利保護の必要性をめぐる議論はむしろ縮小傾向にあり、最低賃金制度の適用に関する進展を除けば、法整備も進んでいない。

一方ドイツでは、在宅形態の就業者の大部分を「家内労働者」、「被用者類似の者」、あるいは「見せかけの自営業者」のいずれかとみなして、家内労働法や労働契約法、労働保護法などの適用を通じて法的に保護している。このため、さらなる法整備は必要とされていないとみられる。

図表  ドイツにおける在宅ワーカーの分類

図表画像

注:家内労働型及び被用者類似型の(△)(×)について、このような分類をする場合もある。

出所:労働政策研究・研修機構(2004)労働政策研究報告書No.5 『欧米における在宅ワークの実態と日本への示唆―アメリカ、イギリス、ドイツの実態から』 pp.30-31、及び労働政策研究・研修機構(2005)労働政策研究報告書No.18 『「労働者」の法的概念:7ヶ国の比較法的考察』 p.14を基に作成。

政策的インプリケーション

調査の結果、各国では在宅就業を行う者の増加に伴い、低い就業条件や低収入といった問題に直面する層が拡大しているとみられるものの、その実態の把握を含め、法制度による対応は前回調査時点から進展しておらず、依然として各国での対応は様々な視点から様々になされており、統一的に在宅形態の就業をとらえて対応している状況にはないことが明らかとなった。

政策への貢献

今後の在宅形態の就業者に関する政策のあり方を議論する際の基礎資料として貢献すると考える。

本文

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研究の区分

課題研究「諸外国における在宅形態の就業に関する調査」

研究期間

平成24年度

執筆担当者

山崎 憲
労働政策研究・研修機構 主任調査員補佐
樋口 英夫
労働政策研究・研修機構 主任調査員補佐
飯田 恵子
労働政策研究・研修機構 主任調査員補佐

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