資料シリーズ No.75
男女間賃金格差の経済分析

平成22年8月31日

概要

研究の目的と方法

本書は、厚生労働省雇用均等・児童家庭局より要請を受けた課題研究「男女間賃金格差に関する研究」のうち、既存統計の再集計(個票分析)による男女間賃金格差の規定要因に関する分析結果をまとめたものである。男女間の賃金格差には、職階、勤続年数等の要因や賃金決定の仕組み、制度の運用状況等様々な要因が影響を及ぼしている。それぞれの要因に応じた対策を講じるためにはその詳細な分析が必要となる。そこで、本書では、2000年代(主に2000年と2006年)について、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」の個票を用いて、一般労働者の男女間賃金格差の水準及び変動要因を明らかにするとともに、「賃金構造基本統計調査」と「女性雇用管理基本調査」等のマッチングを行い、企業内における(女性)雇用管理と男女間賃金格差の関係について分析を行った。

主な事実発見

一般労働者の男女別賃金構造について、男女とも年齢の上昇が賃金に与える影響は大きいが、男性の賃金関数では年齢が高くなると賃金が大きく上昇するのに対して女性はそれほど上昇しない。女性の賃金関数の方が、勤続年数が伸長すること、学歴が高くなること、役職が上位になることにより賃金が大きく上昇している。小企業に比べた大企業の賃金上昇幅は、2000年は女性の賃金関数の方が大きく、2006年は女性の方が小さい。

2000年、2006年の男女間賃金格差について、属性格差(男女の属性別の分布の差異)、非属性格差(賃金構造(賃金評価)の男女の差異)ともに影響している。2006年では2000年より非属性格差の寄与率が若干高まっている。非属性格差では、年齢の評価の男女差(女性は男性より年齢の賃金評価が低い)が最も大きな要因である。属性格差では、女性の勤続年数が短いこと、女性の役職割合が少ないことが主な要因である(表参照)。

2000~2006年の男女間賃金格差の縮小は年齢等の属性の男女の差異の縮小が大きな要因である(年齢の評価の男女差はこの間、拡大要因に寄与)。

同一職種内の男女間賃金格差について、年齢は多くの職種で女性の評価が低い。勤続年数は評価の男女差がみられない職種が多い。職種経験年数は年齢ほど男女差ははっきりしていない。2006年は2000年に比べ、年齢、勤続年数は女性の評価の低い職種数が増加し、職種経験年数は、女性の評価の高い職種、低い職種ともに増加した。評価の男女差のないのはホワイトカラー専門資格職等でみられるが、2006年は減少した

企業の雇用管理は、男女間賃金格差に影響を与える 。1)コース別雇用管理制度の有無別に高卒、大卒の標準労働者の所定内給与を試算すると、コース別雇用管理制度のある企業では、ない企業に比べ、勤続年数を経るにつれ男女間の賃金格差が大きくなる傾向にあり、大卒で顕著である。2)ポジティブアクション(=PA)について、PA施策は女性の賃金に正の影響を与えており、男女間賃金格差縮小に寄与するものと考えられる。3)育児支援策について、育児支援策の種類や制度の利用期間別等ごとに女性の勤続年数の賃金への影響をみると、いずれも女性の勤続年数の賃金への効果が高まっており、育児支援策は、男女間賃金格差縮小に寄与するものと考えられる。

  • 「賃金構造基本統計調査」では役職(職階)は規模100人以上しか調べていないため、職階を含まない全体(規模5人以上)と職階を含む規模100人以上について分析を行った。両方の分析結果をまとめて記載している。
  • 40職種について一般労働者の賃金関数を推計(企業規模5人以上)。
  • マッチングデータ(企業規模100人以上)について各制度ごとに一般労働者の賃金関数を推計。

政策的含意

本分析結果を踏まえると、男女間賃金格差の解消に向けた取組みとしては、公正・明確・透明な賃金制度・評価制度の整備・運用、女性の活用(登用)が可能なよう、職域が拡がるよう、女性の就業継続(再就職)が進むような人事雇用管理制度の整備・運用、結果的に男女格差につながっているような慣行(企業だけでなく社会全体)の見直し、等が重要であろう。

政策への貢献

主な研究成果は、厚生労働省の「変化する賃金・雇用制度の下での男女間賃金格差に関する研究会」(2008~2009年度)で報告し、同研究会の報告書(2010年4月)で活用された。

表 男女間賃金格差の要因分解(本文第1-6-1表、第1-6-2表)

出所:厚生労働省『賃金構造基本統計調査』(2000年、2006年)により計算。

注:1) 復元倍率によるウェイト付けを行った推計による。

2) 男女間賃金格差=男性の賃金−女性の賃金。賃金は時間当たり所定内給与の自然対数値。

3) 表の実際値は各要因の寄与度、割合の数値は各要因の寄与率。

本文

執筆担当者

藤井 宏一 (2010年7月まで)
労働政策研究・研修機構統括研究員
馬 欣欣
労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー
高田 しのぶ
前労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー

研究期間

平成19~21年度

入手方法等

お問合せ先

内容について
研究調整部 研究調整課 03(5991)5104

ご意見・ご感想

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