調査シリーズNo.171
「改正労働契約法とその特例への対応状況 及び 多様な正社員の活用状況に関する調査」結果

平成29年6月26日

概要

研究の目的

①改正労働契約法の無期転換ルール(第18条)や、有期・無期契約労働者間の不合理な労働条件の相違禁止ルール(第20条)に対して、企業がどう対応しようとしているのか(有期契約労働者の雇用のあり方にはどのような影響が及ぶのか)、②改正労働契約法の特例(高度専門職の有期契約労働者及び定年後、継続して雇用される高齢者)はどの程度、活用されようとしているのか、③通算勤続年数が5年を超える有期契約労働者の無期転換等により、その増加が見込まれている多様な正社員の活用状況や今後のニーズ、雇用管理上の課題等はどうなっているのか等について把握する。

研究の方法

企業に対するアンケート調査 。9,639社が有効回答。

※常用労働者を10人以上雇用する全国の民間企業3万社を対象に実施。

主な事実発見

  • フルタイム契約労働者あるいはパートタイム契約労働者を雇用している企業を対象に、無期転換ルールにどのような対応を検討しているか尋ねると、いずれも「通算5年を超える有期契約労働者から、申込みがなされた段階で無期契約に切り換えていく」(フル35.2%、パート40.0%)がもっとも多く、これに「対応方針は未定・分からない」や「有期契約労働者の適性を見ながら、5年を超える前に無期契約にしていく」等が続いた。今回初めて、これまでより小規模な企業も含めて調査したが、何らかの形(通算5年超から+5年を超える前に+雇入れの段階から)で無期契約にしていく企業が、フルタイム契約労働者で計62.9%、パートタイム契約労働者でも計58.9%にのぼり、「有期契約が更新を含めて通算5年を超えないように運用していく」企業(フル8.5%、パート8.0%)を大きく上回った(図表1)。

    図表1 無期転換ルールにどのような対応を検討しているか

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  • 有期・無期契約労働者間の労働条件の不合理な相違を禁止するルールに対応するため、雇用管理上、何らかの見直しを行ったか尋ねると、フルタイム契約労働者あるいはパートタイム契約労働者を雇用している企業のうち、「既に見直しを行った」割合は5.7%で、「今後の見直しを検討している」(10.3%)とあわせても6社に1社程度にとどまった。こうしたなか、「見直し予定はない(現状通りで問題ない)」とする企業(39.5%)や「見直しを行うかどうかを含めて方針未定」の企業(41.5%)が各4割程度みられ、あわせて8割を超えている(図表2)。 対応方針を決める上でネックになっていることとしては(複数回答)、「法の詳細(どのような労働条件の相違が不合理と認められるか等)が分からないこと」がもっとも多く(44.2%)、これに「労働条件の不合理な相違の有無の点検・精査」(40.0%)等が続いた。

    図表2 有期・無期契約労働者間の不合理な労働条件の相違禁止ルールにどう対応するか

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  • 全有効回答企業のうち、多様な正社員区分を今後、新たに導入(既にある場合は増員)する予定があるとする割合は3割超(32.1%)となった。導入(増員)の意向は「宿泊業,飲食サービス業」(44.8%)や「医療,福祉」(41.1%)、「運輸業,郵便業」(37.4%)、「生活関連サービス業,娯楽業」(37.0%)等のほか、大規模企業になるほど高く、「1,000人以上」で過半数を占めている(51.1%)(図表3)。 多様な正社員区分を導入(増員)する理由としては(複数回答)、「労働力の(量的な)確保に対する危機感が高まっているから」(54.5%)が最多で、次いで「労働者の価値観の多様化への対応や仕事と生活の両立支援等のため」(37.9%)、「もっと女性や若者、高齢者を採用・活用したいから」(30.3%)、「非正社員からの転換を促し、優秀な人材を確保(囲込み)したいから」(30.0%)等となっている。

    図表3 多様な正社員を今後、新たに導入(増員)する予定はあるか  多様な正社員を導入(増員)する理由は何か

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政策的インプリケーション

  • 今回の調査では、無期転換ルールの効力が本格的に発揮されてくるであろう2018年4月以降へ向けて、(調査時点で)残すところ1年半に迫るなか、より小規模な企業も含めた現況を把握した。その結果、無期転換ルールについては規模を問わず、何らかの形で無期契約にしていく企業が、「有期契約が更新を含めて通算5年を超えないように運用していく」企業を大きく上回った。但し、(10人以上)49人以下の企業では、「適性を見ながら5年を超える前に」あるいは「雇入れの段階から」、無期契約にしていく割合も相対的に高いのに対し、50人以上の企業では「通算5年を超え、申込みがなされた段階で」無期契約に切り換えていく割合が高いといった特徴がみられた。なお、これまでのところ、企業は概ね、無期転換ルールに前向きな対応姿勢を示しているが、「雇止め」は一定の場合に無効とされることや、無期転換ルールの回避を企図した「雇止め」は望ましくないこと等について、今一度、周知を徹底しておく必要があると思われる。
  • 有期・無期の契約労働者間に於ける、不合理な労働条件の相違を禁止するルールについては、「既に見直しを行った」あるいは「今後の見直しを検討している」企業は、規模を問わず一定程度にとどまることが判明した。また、依然として「対応方針は未定・分からない」とする企業も多く、対応方針を決める上でのネックは「法の詳細が分からないこと」等が、規模に係わらず多く挙がった。同ルールを巡っては、規定の内容に未だ不分明なところもあることから、より具体的に分かり易い形で、明確化する必要もあるのではないかと考えられる。
  • 改正労働契約法の更なる周知に当たっては、(10人以上)49人以下の企業と50人以上の企業の間で、アプローチを変える必要があることも示唆された。前者では相対的に、「新聞報道やホームページ等での紹介」や「社会保険労務士や弁護士等からの情報提供」等に依存している割合が高く、後者のように自ら「雑誌や媒体」を通じて情報を入手したり、「セミナー」に参加する余地等は限られている。(10人以上)49人以下の企業では、法の内容までの認知度が1/4程度(有期契約労働者を雇用している企業だけで見ても1/3程度)にとどまっていることから、「ホームページ等」での案内の梃入れや「パンフレット等」の更なる配付、また、例えば新聞の広告・記事から、資料の請求や実際の相談につながるような工夫を行うなど一層の周知を図る必要がある。

本文

全文がスムーズに表示しない場合は下記からご参照をお願いします。

研究の区分

研究期間

平成28年4月~平成29年5月

執筆担当者

荻野 登
労働政策研究所 副所長
新井 栄三
調査部主任調査員(政策課題担当)
渡辺 木綿子
調査部主任調査員補佐(政策課題担当)(執筆)

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