マルチ・スズキ社の2012年の暴動に関する判決

カテゴリー:労使関係

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  • 国別労働トピック:2017年6月

2012年7月、マルチ・スズキ社のハリヤナ州マネサール工場で暴動が起きた。それを扱った裁判の判決が、3月10日に下された。暴動に関わった労働者のうち148人が訴えられ、31人が有罪となった。そのうち13人は殺人罪、18人は暴動罪だった。これに対して、被告側弁護士は控訴する意向を示している(注1)

2012年7月のストライキの暴動化

首都ニューデリー近郊にあるマルチ・スズキ社のマネサール工場において、2012年7月、大規模なストライキが発生した。労働者とスーパーバイザー間の労働組合承認や非正規従業員の労働条件の交渉の決裂がきっかけとなったストライキは、同月18日に暴動化し、94人のマネジャーやスーパーバイザーと9人の警官が負傷した。暴動で起きた火災は人事部長が死亡するまでに拡大した(注2)。暴動に関わった148人の労働者が殺人に関与した容疑で逮捕され、工場は約1カ月の閉鎖を余儀なくされた。マルチ・スズキ社はインド最大の自動車メーカーであるため、事件はメディアで大きく取り上げられることになった(注3)(注4)

31人が有罪判決

4年以上の審理期間を経て、2017年3月10日、グルガオン裁判所(ハリアナ州)は、148人の被告うち31人に有罪判決を出した。そのうち、13人は殺人罪(終身刑)、18人は暴動罪(傷害、器物損壊、銃器を用いた暴力など)だった。その他の117人は無罪となった。この判決を受けて、被告側の弁護士は高裁へ上訴するとしている。

この判決にマルチ・スズキ社のマネサール工場とハリヤナ州グルガオン工場で働く2万5000人以上の従業員は、工場が提供する昼食をボイコットし、抗議の姿勢をみせた(注5)

投資リスクとして残る労使関係

マルチ・スズキ社のストから波及した暴動は、インドにおける製造業の潜在的なリスク要因となっている(注3参照)。インド政府は「Make in India」というスローガンを掲げて諸外国からの投資を促進している。しかし、暴力的なストが発生する懸念は投資への大きな阻害要因となっている(注5参照)。そのため、過激なストライキを抑止する規制の必要性が指摘されている(注3参照)。

一方、労働者側に立つ暴動の被告側弁護士は、殺人罪の判決を受けた13人は全て労組の幹部であり、意図的に労組幹部をねらいうちしたもので、判決内容が客観性に欠けるとする(注6)

判決内容を不服とするハリヤナ州とラジャスタン州の労働組合、全インド労働組合会議(AITUC)、インド労働組合センター(CITU)、インド労働者連盟 (HMS)とマルチ・スズキ社の従業員数名を合わせた300人以上の労働者が3月15日に会合を開き、無罪となった労働者が再就職できるように求める新たな活動を開始することを決めた。マルチ・スズキ社の従業員約6000人は、被告として拘留が続いている労働者の家族のための募金活動を行っている(注7)

それに対して、マネサール工場がある地域のグルガオン商工会議所(Gurgaon Chamber of Commerce and Industries (GCCI))のPK Jain会頭は、経営側の立場を代弁して、判決内容を一定の評価をしながらも、安定的な労使関係を構築するためには、まだ時間がかかるだろうとして、政府を含めた全てのステークホルダーが暴力的手段を用いない素養を身につける必要があると宣べた(注5参照)。

(ウェブサイト最終閲覧:2017年5月19日)

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